アンジェラスの鐘

東京大司教区の初代教区長、オゾーフ大司教により、パリのサント・シャペル
(13世紀初頭のゴシック全盛期に建てられた聖堂)にならって
設計されたと言う築地教会旧聖堂。
大正12年の関東大震災で焼失してしまったため、今では写真でしか
見ることは出来ないが旧聖堂の”遺品”とでも言うべき物が
現在でもいくつかのこっている。
なかでも”お告げの鐘”が最も旧聖堂を偲ばせるのではないだろうか。

現在の聖堂は1927年(昭和2年)レイ大司教により再建されたものだが
このジャンヌ・ルイーズおばさんは天主堂よりは早く、
百年を生きつづけて今も健在である。
おばさんとは、かって朝、昼、晩のお祈りの時間を告げていた、
アンジェラスの鐘である。

この鐘には”Jeanne louise de Yedo”(江戸のジャンヌ・ル・ルイーズ)
という名が付けられており、鋳造は1876年(明治九年)である。
鐘の”銘”をみてみると、名付け親は第二代目の主任司祭を務めた
ルマレシャル神父でフランスのRennesというところでつくられたことがわかる。
銅製洋鐘で”ビック・ベン”型。
高さは約九十五センチメートル、口径約六十八センチメートルという大きさ。

さて、現在築地教会にはジャンヌ・ルイーズ ひとり? しかいないが、
旧聖堂時代には,もうひとりジャンヌ・ルイーズと対になる、
これよりひとまわり大きな鐘があり、
これら大小二つの鐘が、お告げの鐘としてデュエットを奏でていた。

大きなほうの鐘の名は”Adelaide Jose’phine(アドレード・ジョゼフィーヌ)
という。
その後1920年(大正9年)大司教座が関口教会に移ったのと同時に
ジョセフーヌも関口に移り
いまは”関口のルルド”として保存されている。

ルイーズは築地でいまも日曜日のミサの時刻を告げている。
鳴らしているのは音二郎さんの娘、石川ゆきさん
(教会付属聖ヨゼフ幼稚園教論)である。
「昭和十五年から、引退した父にかわって鳴らしています」という。